我が山猫軒立大学は、山を切り開いて作った大学なので、歩道のすぐ下が山の斜面になっている。四季折々、山の霊気がそこはかとなく滲むような、そんな場所に住んでいる。
昨晩9時頃、研究室から家に帰る途中のこと。右手に山の斜面を見ながら、歩道を歩いていたら、数十メートル離れた山の藪の中から尋常ならざる音が聞えてきた。
「ミシッ、バキ、バキバキバキッ.....」
何か重いものに藪の木々がひしがれていくような、そんな音。
実は、その夜8時頃、家にこんな電話があったばかりだった。

「そちらの寮から100メートルほど離れた農家の柿の木が、ツキノワグマに食べられて傷つけられたという報告が入りましたのでご注意下さい....」

うわ、クマだ!と瞬間悟る。人間が立てられるような音ではない。音は、斜面の片側からゆっくりもう片側に移り、どうやら歩道に一番近い竹藪の中に入っていったようだ。
暗闇に向かって目をこらしても、クマの姿は見えない。しかし断続的に音は聞える。

台風続きで、山の中も実に洒落にならない状況なのだろう。とうとうこんな人の近くまでクマは降りてきてしまった。

小さい学生さんにこの話を伝えるべく、いそいで帰宅する。

小さい学生さんは、ソファに座り、数日前に自分で100円で買ったさぼてんの「ゆうちゃん」に歌をうたって聞かせていた(笑)。(「そうするとよくそだつんだよ!」)

そして小さい学生さんは、学校で配布された大きなクマよけすずをランドセルに結びつけた。

今日は雨です。