自宅で昼食をとりながら新聞を読んでいた。ふとある広告の惹句が目に入る。

「よくばり 上海+パリ 6日間 上海蟹を食べてからパリ!!」


上海で一泊して上海蟹を食し市内観光などの後、機中泊でパリへ。パリでは「ゆとりの3連泊」をする。そこでは昼食に名物エスカルゴをいただいたり、ベルサイユ宮殿やルーブル美術館観光をしたりして、再び機中一泊、上海経由で日本に到着するという段取りである。
「値下げしました129.000円」

助手は人生における食欲を高く評価する立場にあるが、それをただの欲望の噴出とすることには禁欲的でありたいと常々考えている。
つまり、食べる行為には、食物の背景に在る文化も含めた「対話」が必要なのである。「対話」なき欲望の噴出は、どうだろう。此の地でカニを食い散らかし、彼の地で西洋カタツムリを食す。日本よりは安いブランドバッグを買い漁る。何とも暴力的ではないか。

と、ひとり広告を眺めては憤慨しつつ、大盛りのけんちん汁を飲み干し、焼き鮭をのせたご飯をお代わりし、ジャガイモのミルク煮の小鉢を片づける。
まだ怒りが収まらないので、冷蔵庫をあけて、プレーンヨーグルトを出す。それをデザート椀に軽く一杯、メープルシロップをかけて頂く。
研究室に帰ってきてもまだ釈然としない気分が残る。
室内に設置してあるカセットコンロにやかんをかけ、緑茶とみかんを用意する。
この日記が書き終わる頃にはお湯も沸くだろう。
そういえば今日の三時のおやつは何を用意していたっけか.....。