麗らかな秋の陽光を受けながら、つきみ町というところまでドライブに行った。
ある教授の奥様が、ご主人とここで地元産の食材を使ったフランス料理の「マナー教室」なるものに申し込んでいたところ、ご主人は大学の仕事でキャンセルになり、困った奥様が助手に声をかけたのである。実は車で一時間半もかかる場所にあるので、食事の誘いながら運転手も兼任していたという訳である。急な話だったが、運転好きな助手は、本学で「準公用車」として活躍しているシトロエンシャンソン98年式(色はマルーン)に奥様と小さい学生さんを乗せて、朝10時に大学を出発した。
現地は、距離はあるけれども地図的には非常に単純な場所にあるので、飛ばせるところは時速80キロで国道を飛ばし、皆で快適なドライブを楽しんでいた。
そして、ある分岐点でのこと。地図的には、この道を左に入った方が距離が短いという助手の判断で、国道から県道に入っていった。
落ち葉を燃やしているのか、所々山の中から煙がたなびき、赤い実をつけた柿の大木が目の前を過ぎていく。すてきすてき、と車内から声が上がる。
一方、県道は、山の方にあがっていきどんどん細くなっていく。助手の心に暗い影がしのびよる(「迷ったか?!」)。しかし、標識は「××号線」と正しい道を示している。それにしても.....。
県道は、すっかり只の山道となり、右に左にくねりながら奥深い山にシャンソンを導いていく。細く険しい道なので、時速が20キロ程度しか出せない。ふと右手を見ると、すごい高さまで上っていることに気が付く(しかもガードレール無し)。
車中の二名は、「わあ!あの赤い葉っぱの木すごーい」と歓声を上げていたりするが、助手はそーれどころではナーイ(笑)。西部警察の1シーンのようにハンドルを右に左に切り、ブレーキを調節しながら最大限の注意を払いつつ、眼前に狸や狐やイノシシが飛び出さないことを祈りながら車を進めた。
山越えを無事達成したのが、それから30分後くらいだったろうか。長かった。距離的にはショートカットだったが、スピードが出せないので結局12時の開始時間ギリギリにレストランに到着した。
で、肝心のお食事ですが、マナー教室というのはどうも建前上で、実際にはビュッフェ形式で出された。
メニューは:

  • 山女魚のエスカベッシュ
  • 地元産野菜のサラダ
  • 地元産野菜のピザ
  • 伊勢エビの刺身
  • 地鶏のクリームグラタン
  • 鮎のリゾット
  • イノシシ肉のラザニア
  • イノシシ肉のシチュー
  • ブラマンジェとフルーツ


と豪勢かつ栄養満点な内容だった。
助手と小さい学生さんは、ここで生まれて初めてイノシシ肉をいただいた。赤ワインなどで臭みをすっかり消してよく煮込んであったので美味だったが、豚肉とこうも弾力、歯ごたえが違うモノかとかみ切るのに少々苦労をした。鮎のリゾットがまた美味であった。


食後は、レストランの隣の温泉にゆっくりつかり、ほどよく休んだところで、今度は安全な国道沿いで帰宅の途につき、無事教授夫人を自宅までお届けした。

そういえば、小さい学生さんは食後、レストラン周辺の大きなブナの木から風が吹くたびに落ちてくる紅葉を一生懸命つかまえていた。
帰宅後は、近所の仲良しの男の子(6歳)と、これまたチャンバラごっこに興じていた。

全国の、とくに都の小さい学生さんたちは、今頃休日返上で塾に通っているだろうにナァ、とぼんやり考えながら、遊ぶ小さい学生さんを眺めていた。