今年も、そろそろ終わりを告げようとしている。

今年助手一家は、父方の祖父と祖母を相次いでで身罷ったので、目だって祝わず静かに過ごす事にしている。


助手は妹と休みごとに、この祖父母のいる田舎に預けられていた。
そこは、電車を乗り継いで乗り継いで、子供心にはとても遠くの、海と山がきれいなのどかな場所で。

夏休みは、午前中は必ず祖父が勉強を見てくれた。
中学校の校長先生をしていたから、子供に教えるのがとても上手かった。
おかげで大層アホだった助手もなんとか人並みになれた。

泳ぎも上手だった祖父は、海では腕につかまらせてくれて、遊んだり、泳ぎを教えてくれた。
夜は、祖母が井戸水で冷やしてくれたスイカを、星空を見上げながらいとこ達と縁台で食べたものだった。
イカは甘かった。
盆踊りのときは、村じゅうが公民館に集まり、その地方独特の節回しの唄にあわせて踊ったり、屋台で遊んだりした。

冬休み。
祖母は冷えないように、とセーターを編んでくれたり、半纏を縫ってくれた。
祖父や祖母とコタツで一緒にみかんやおやつを食べてお茶飲んで、よくしゃべった。

年末はみなで一緒に大掃除をして、かまどでもち米をふかして杵と臼で餅をつくのを見せてくれた。
まだ若かった父や叔父達が餅をついたし、時々子供達にもつかせてくれた。出来上がった餅は、その場で食べる以外は祖父がすばやくのし餅と鏡餅にこしらえていた。

そして晩。
歌合戦のときだけは夜更かしをしても良いので、他のいとこ達と共にテレビを観たり、座敷で遊んだりわくわくしながら新年の鐘の音を待っていた。新年の昼間は、羽子板こま回し、凧揚げと一通り遊んだ。
そういえば助手は、こま回しが大好きだった。
今でも、回せる。

書き出すときりがないほど、祖父と祖母は、素朴で豊かな愛情でもって、助手たちの子供時代を彩ってくれた。
いとこや祖父祖母、親戚達とにぎやかに過ごす時間は、助手が大学に入った頃からだんだん少なくなっていった。
子供時代も、そして助手が子供だった「時代」そのものも過ぎ去った。

いま、リビングでは小さい学生さんがひとり、とてもうれしそうに歌合戦を観ている。小さい学生さんのおばあちゃんが年越してんぷらソバを作ってくれている。
助手はずっと仕事だが、行く年とともに、過ぎ去った子供時代を思い出している。

そうして、小さい学生さんの子供時代が出来る限り豊かでうつくしいものになるように、願っている。助手ももっと甲斐性つけないとなあ。


おじいちゃん、おばあちゃん、どうかこれからも見守っていてください。